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地元を持たない外国人がどうして地域密着型ゲストハウスを開業できたのか?(1/2)

time 2017/09/15

地元を持たない外国人がどうして地域密着型ゲストハウスを開業できたのか?(1/2)

お宿:ゲストハウス萬家(マヤ)
お名前:パクさん
開業:2017年7月
お住い:兵庫県

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ゲスト同士の交流もいいけど、世界の外国人と地元に住んでる日本人と交流できるからこそ意味がある

Q:出身はどちらですか?

韓国です。韓国のソウルです。

Q:旅の経験はどれくらいありますか?

実はバックパッカーしたことないんです。けっこうみんな意外だって言うんですけど。みんなゲストハウス作るようになったきっかけって自分がバックパッカーで海外で楽しかったから日本でもやりたいって思ってる人が多い中で、僕はしたことないから、なんでゲストハウスやるのかよく聞かれるんです。

Q:どうしてゲストハウスをやろうと思ったのですか?

僕は旅に行った時に楽しい、お世話になったからゲストハウスしたいっていうのがきっかけではなく、多文化交流、異文化交流できる場所に意味があるなと思ってるんです。色んな国の人種の人々が交わって繋がって友達になって友達が世界中に増える。そういうのを何らかの手段を使ってやりたかった。考えた時にゲストハウスという宿っていう手段が一番僕に向いていて、活動の中で一番効率がいいかなと。

Q:何かきっかけがありましたか?

昔の話のに戻るんですけど、僕は韓国生まれ育ちなんですね。高校生の時まで日本人と接する機会がなかったんです。マスコミとかでは(日本の)良いこと言わないです。(当時僕も)日本に対してのそういう先入観があったんですけど、高校の時に第二外国語が日本語かドイツ語かだったんです。僕は日本語の方が簡単そうだったんで日本語選んで、先生が日本と韓国の学生交流会を主催してた方で、僕に「交流会があるから参加してみない?」って声をかけてくれたんです。その時に初めて海外に行って交流して三日間一緒に過ごしたんですけど、日本人と出会って交流してみたらすぐに打ち解けて、みんないい人だったしすごく仲良くなってそこから日本が大好きになった。単純ですけど。最後に空港で別れる時はみんな抱きあって「また必ず会おうね」って。そのシーンがずっと忘れられなかった。

その時に気づいたんですよ。これこそが本当の日韓関係であって、お互いの文化を持ってる人たちが(相手の文化を)尊重して理解し合える社会を作るためには個人と個人の交流じゃないと実現できないというのを身をもって経験した。自分が経験したことを若い人たちにも経験してほしいし、いろんな国の友達作れるし、もっと広い視野で考えてもらいたい。その時に国際交流できるコミュニティを作りたいと思ったのがきっかけです。

Q:パクさんの日本語はネイティブ並みですが、日本語は高校以外でどこかで教育を受けたのですか?

高校の時に初めて日本語勉強してそこから好きになって、大学の専攻も日本語教育を、日本語の教師になりたくて大学院まで出たんです。

Q:高校の学生交流会の後、日本に来るきっかけは何ですか?

初めてきたのは交換留学生でした。ちょうど10年前に大学三年生の時に神奈川にある大学に1年間交換留学して戻って卒業して。

僕は日本語の先生になりたかったんで頑張って日本語の勉強したんです。試験勉強もしたんですけど、韓国の事情が変わって日本語の先生が飽和状態になってしばらくは採用しませんってことになって。日本好きだし日本語勉強してきたし若いうちにできることやりたい。韓国じゃなくって日本の組織の中に入って自分がどれくらい通用するか試してみたい。一番いい方法はワーキングホリデーかなと。

次は大学院卒業してからワーホリで日本(東京)に来ました。30歳までしか申し込めないんですよね。日本で1年くらい日本で活動できるからこれを使わない手はない。ワーキングホリデーでビザをとってワーホリで来た時は何も決まってなく交換留学生のときに仲良かった日本人の友達が埼玉に住んでたので居候してた。昼は就活して夜はとんかつ屋でバイトしてました。一ヶ月間くらいやってたら最終面接まで行ったところがいくつかあって最終的に決まったのは半導体部材を作るメーカー。新卒扱いで入ることができたんです。正社員で就職したんで就労ビザになって4年間働きました。

Q:お仕事はどうでした?

一年間くらいは日本で営業回りして三年間は海外にも。僕は本社(品川勤務)で、たまに出張で韓国行ったりインドに行ったりでした。

Q:英語はどこで身につけたんです。

英語はですね、僕は全然できなくて。

実は入社してから2年半くらいのころ会社で「1人でインド行って来い」と任せられて。1回行ったら2週間くらいずっと。片言の英語で代理店開拓もやりました。メーカーだから現地人がやってる代理店と一緒に営業周りしたり。あっちはインドなまりの英語だし、こっちは日本語なまりの片言の英語で。

今となっては楽しい思い出です。当時はけっこう大変でしたね。いい勉強になりました。旅で行けたら良かったんですけどね。

Q:辞めるきっかけは何でした?

(妻が)2人目妊娠した時がきっかけです(入社2年目に結婚されてる)。働いて5年目になる頃。2人目ができた時にちょっと怖くなったんですよ。このまま子供が成長すると安定を求めないといけなくなるだろう。ずっとこの会社を辞められずに働くことになるだろう。そうしたら自分が今まで夢見てきた国際交流の場所は挑戦できないだろうなと思ったんですね。極端に考えたら「もしずっと(この会社で)働いてて自分が死ぬ間際に後悔しない自信があるかどうか?」。じゃ、後悔するなって結論になったから辞めるしかなかった。妻と相談して妻も理解してくれて。

Q:辞めると決めた時は次に何をしようと考えましたか?

もう自分の中ではゲストハウスって決まってました。泊まる場所っていうのにとても意味があるなって、施設に色んな人が集まるので僕がつなげることができるかなと思った。

宿屋は(前の仕事と)畑違いですから働いたこともなかったし自分一人では無理だと思ったので、品川にゲストハウスをやりたい人を支援してくれてるところがあって、そこが宿場JAPANで運営している品川宿ゲストハウスっていう修行先なんです。インターネットで調べて会社(当時の勤務先)が品川だったし会社の帰りにスーツ着たまま相談に行って。

Q:ゲストハウス萬家(マヤ)の経営理念について教えてください

品川宿で働いてて影響されたんですけど、そこでは「多文化共生社会の基盤作り」っていうキャッチフレーズでやってまして、具体的には宿場JAPANの彼(師匠)がすごいお世話になってる地元北品川(東海道五十三次の最初で最後の宿場町の品川宿)にピンポイントで宿を作って宿屋を復活させたい。

こだわってるところは町と一緒にゲストをおもてなしする。ゲストが来た時になるべく町の環境を使っておもてなしをやってまして、そこは素泊まりなんです。自然的に外に出ないといけない。食べたり飲んだり風呂入ったり買い物したり、欠かせないじゃないですか。それがさらに宿と町の人がちゃんと顔もつながっててフォローしたり、ゲストが行ったり挨拶に行ったりして。

それまではゲストハウスを作ってみんなが来れる場所を作ればいいと思ってた。僕はそこで修行して働きながら気がついたのは、せっかく作るんだったらゲスト同士の交流もいいけど、世界の外国人と地元に住んでる日本人と交流できるからこそ意味があるんじゃないかと思ったんです。本当に僕がやりたいのはそれかもと思ったんです。

日韓関係だけではないけど、僕は日本のことも勉強してるし住んでるし日本人のこともわかってる外国人。両方の立場もわかってる。両方を繋げることができると思った。ただ僕には(日本での)地元がなかったんですよね。

Q:ゲストハウス萬家では求人募集してますが、どういう人に来て欲しいですか?

地域密着でやってるので一緒に町を盛り上げたい、地域の活動をしながらゲストとも交流したい人。実際に町のイベントも手伝ったりすることも増えてくるので、そういう仕事も楽しんでやっていける人が大前提です。

ゲストハウスによっては色んな雰囲気があるじゃないですか。一緒に汗をかきたいっていう表現がいいんでしょうかね。ある意味泥臭いかもしれません。

長く働いて欲しい。後々マネージャー業務まで任せられる責任感のある人。信頼しあえる関係になるまでと仕事を覚えるのと時間はかかるでしょうね。働いてて得るものはいっぱいあると思います。

Q:社会経験2年という条件はなぜ付けられましたか?

先入観かもしれないですけど、会社で経験のあるの人の方が理解しやすいと言うかお客さんの気持ちも察しやすいと思う。バイトも大丈夫です。ただ「英語好きで、みんなで飲んで楽しそうだから働きたいです。」っていうそんな感じでは来てほしくないという意味です。実際に宿の業務って楽しいことばかりじゃないですから、裏の仕事の方が多いし半分以上掃除だし。実際来てみて楽しくなかったってなるかもしれないから。

つづく(次回はゲストハウス開業のエリア選択から町との交流、物件探し、そしてオープンへ快進撃)

 

ありがとうございました。

身をもって体験した異文化交流で国際交流の場を自ら作りたいという夢に変え、信念を持ちつつ日本にやってきたパクさん。宿場JAPANの師匠に出会い旅人どうしの交流だけでなく、旅人と地元の人の交流に意義を見つけ出す。

まさにグローバルとローカルを繋げるグローカル。

そんな外国人である、日本に地元を持たないパクさんが、どうやって地元密着型ゲストハウスを作り上げていくかは、次回のお楽しみ。

インタビュー:クリハラノブユキ

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